こんにちは、ホスピタリティ弁護士の長屋です。
担当した事件が、先日、判例タイムズ(№1391号・218頁)に掲載されましたので、その内容を少しだけご紹介します。
注文住宅を建てようとして建築事務所に設計をお願いすると、設計業務と監理業務(図面どおりに工事が進んでいるか確認する業務)が一緒になった設計監理契約を締結することがあります。
無事に建築物が完成すれば問題はないのですが、中途解約などにより報酬額を巡って紛争に発展することがあります。
本件も報酬額を巡って紛争になり、争点の一つとして、解除時までの報酬額が問題になりました。
本件では報酬総額は決まっており、契約成立時、建築確認済証交付時、業務完了時の3回に分けて支払うことになっていました(業務割合に応じた分割払いではありませんでした)。しかし、設計業務と監理業務の報酬割合が定められていなかったため報酬額の算定が問題となりました。
報酬割合が明確でなかったため、積算方法(打ち合わせ回数や図面数、CG枚数などを単価にし掛け合わせる方法)にて報酬額を算出し請求しました。一方で、積算方法の場合、積算方法によっては報酬総額を超える可能性や、設計業務と監理業務との報酬割合が不合理に偏る可能性もあったため、個人的には合理性の点で非常に悩ましいところがありました。
そこで、合理性を担保できる基準というものがないかと調べていると、業務報酬の算出基準を定めた国土交通省告示第15号というものがありましたので、上記積算方法に合わせて告示15号に基づく報酬割合も参考にするよう指摘(主張)しておきました。
最終的に、本判決は、告示15号が示している業務経費にかかる業務量の割合を参照し、設計における技術料等経費に相当程度の価値を見出し、「設計報酬:監理報酬=80%:20%」を相当とし、設計業務の出来高は95%が相当と判断しました(大阪地判平成24・12・5)。
今回は、建築業界での一つの参考事例でしたが、技術料というのは目に見えないところがあり、報酬額を全体の費用の何割という決め方をする業界では途中解約時の報酬額の算定で揉めることが多いと思われます。
業界の慣習などが基準化されていないかを調べることは大切かもしれません。