取引先が破産した??動産売買先取特権って??

取引先が破産した場合に、売掛金を回収する一つの方法をご紹介します。

取引先に商品を納品したばかりなのに、弁護士や裁判所から破産する旨通知が届くことがあります。

納品と同時に代金を回収できていればいいですが、継続的取引において代金引き換えで納品することは稀ですので、もはや代金を回収する術はないのでしょうか。

 

ここで登場するのが「動産売買先取特権」(民法311条5号)です。

商品を売買した場合に、代金債権を優先的に回収できる担保権です。

この先取特権は、破産手続の場面では「別除権」(破産法2条9項、65条1項)と呼ばれ、破産手続によらないで権利行使することができます(ただし、裁判所の手続は必要です)。

一方で、破産管財人が選任され商品が換価されてしまうと、もはやどうすることもできなくなりますので、速やかに対応する必要があります。

 

この先取特権を行使できる場面は次の二つです。

1 納品した商品が取引先にある場合(A→B)

動産売買先取特権に基づいて商品を差し押さえ、競売手続きを経て配当により債権回収を図ります。破産管財人が換価するよりも早く差し押さえる必要があります。

商品を特定するために(商品名、数量、代金)、売買契約書、発注書、受領書(又は配達原票)、請求書(支払日到来)などの書類を提出しなければなりません。平時の取引からこれらの書類をきちんと揃えておくことが肝要になります。

 

2 取引先が納品した商品を転売してしまった場合(A→B→C)

このように転売されているケースでは、取引先が商品代金を受領していなければ取引先の転売先に対する代金債権を差し押さえ、これを取り立てることで債権回収を図ることができます。これを「物上代位」といいます。

ほとんどが転売先に直接納品するような取引形態になると思いますが、第三者が絡みますので、前記1と比較して書類の取得が難しくなります。

AB間の売買契約書、発注書、請求書(支払日到来)、BC間の発注書、請求書、Cの受領書(又は配達原票)などが必要になります。

 

特定の商品が発注されて、確かに納品・受領された後、代金の支払日が到来したことを証明しなければなりません。日頃から、売買契約書、発注書・受注確認書(請書)、納品書、受領書(配達原票)などの書類をきちんと取り交わし、支払日の到来を早められるよう工夫しておくことや、危機時に協力が得られるよう転売先と信頼関係を築いておくなど、平時から危機時に向けた対策を立てておくことが重要です。

 「動産売買先取特権」の行使には、事前の準備と迅速な対応が求められます。