母国で服役することはできる?

こんにちは,ホスピタリティ弁護士の長屋卓嗣です。

無事に退院してきましたが,順調に回復しているのでしょうかね?やはり耳が聞こえないというのは不便ですし,自分の声の大きさがよく分かりません^^;

さて,今日は過去に調べたことの確認です。許永中受刑者が日本で有罪判決を受け,母国韓国での服役を希望し,その後,韓国に移送されて服役していますが,そのことが話題になったときに調べてみたものです。

【外国人が母国で受刑することができる制度】

日本は「刑を言い渡された者の移送に関する条約」(受刑者移送条約。欧州評議会条約112号)を批准しているため,受刑者の母国が同条約の締結国であれば,(一定の条件はありますが)母国で受刑することができます(「国際受刑者移送法」に具体的な規定あり)。
 
欧州評議会ホームページによると,条約締結国は平成24年3月現在で64カ国だそうです。アメリカ合衆国,韓国,ロシア,オーストラリア,イスラエル・・・etc
受刑者が母国で服役するための条件として,受刑者が同意すること,受刑中の犯罪が母国でも犯罪として扱われていること,日本の同意,母国の同意などが必要となります。

 
そもそも前記法律は,拘禁者について「国際的な協力の下に,その本国において当該確定裁判の執行の共助をすることにより,その改善更生及び円滑な社会復帰を促進することの重要性にかんがみ,並びに日本国が締結した刑を言い渡された者の移送及び確定裁判の執行の共助について定める条約を実施するため」の必要事項を定めるとされています(法1条)。

 
すなわち,「改善更生」「円滑な社会復帰の促進」に資するかどうかに照らして,母国で受刑させることが相当かどうかを慎重に判断しなければならず,これは法務大臣の裁量に委ねられています。

 
※「受入移送」は条約締結国で刑の言い渡しを受け拘禁されている日本人受刑者を我が国に移送する場合をいい,「送出移送」は我が国で刑の言い渡しを受け拘禁されている外国人受刑者をその母国である条約締結国に移送する場合をいいます。

どこの刑務所であっても,しっかりと反省してもらい二度と同じ過ちを繰り返さないようにしてもらいたいものですが,言葉や慣習の違いなどで母国で受刑する方が安心?なのかもしれませんね。